食事のあいさつ学

なぜ「いただきます」の時に手を合わせるの?合掌の由来と教え方

Tags: 食事のあいさつ, いただきます, 合掌, 食育, マナー, 子供向け, 由来, 感謝

はじめに:給食や食卓で見られる「手」の動き

小学校での給食の時間や、ご家庭での食事の前に、「いただきます」というあいさつと共に、多くの子どもたちが手を合わせています。この手を合わせる動作は「合掌(がっしょう)」と呼ばれています。子どもたちの中には、なぜ手を合わせるのか、その意味を知らないまま行っている場合もあるかもしれません。

この合掌という動作には、日本の食文化やあいさつの深い意味が込められています。今回は、この合掌の意味や由来、そして子どもたちに分かりやすく伝えるためのヒントをご紹介します。

食事の時の合掌に込められた意味

食事の時に手を合わせる合掌には、様々な感謝の気持ちが込められています。単なる作法としてではなく、どのような思いが込められているのかを子どもたちに伝えることが大切です。

主に、以下のような意味があると考えられています。

  1. 命への感謝: 私たちが食べる肉や魚、野菜など、全ての食べ物は元々、動物や植物といった「命」です。その命をいただくことで、私たちは生きていくことができます。合掌は、その命そのものに対する感謝の気持ちを表す動作です。

    • 子どもへの伝え方のヒント: 「みんなが元気でいられるのは、色々な命をもらっているからだよ」「お肉もお魚も、野菜も果物も、元々は生きていたんだよ。ありがとうの気持ちを込めて、手を合わせてみようね」のように伝えてみましょう。
  2. 食べ物に関わった全ての人への感謝: 食べ物が私たちの食卓に届くまでには、たくさんの人の手が関わっています。農家の方が野菜を育て、漁師さんが魚を獲り、料理を作る人が調理し、運ぶ人が届けてくれます。合掌は、これらの人々への感謝の気持ちも表します。

    • 子どもへの伝え方のヒント: 「このご飯、誰が作ってくれたかな?」「畑で育ててくれた人は?」「お店に運んでくれた人は?」など、食べ物がどのようにして届くかを一緒に考えて、「たくさんの人が関わっているんだね。ありがとうを込めて、手を合わせてみよう」と話してみましょう。
  3. 自然の恵みへの感謝: 太陽の光、雨、土、水など、食べ物が育つためには自然の恵みが不可欠です。合掌は、私たちに豊かな恵みを与えてくれる自然への感謝の気持ちも含まれています。

    • 子どもへの伝え方のヒント: 「お米や野菜は、お日様の力や雨のおかげで大きくなるんだよ」「自然にも『ありがとう』の気持ちを伝えようね」のように優しく説明してみましょう。

これらの感謝の気持ちを込めて手を合わせることで、私たちは食べ物や、それに関わる全ての存在に敬意を払い、大切にする心を育むことができます。

合掌の簡単な由来について

食事の際の合掌は、日本の仏教の習慣と深い関わりがあると言われています。

仏教において、合掌は仏様を拝む時や相手に敬意を示す際に行う基本的な動作です。左右の手を合わせることは、仏様の世界と私たちの世界、あるいは自分自身の中にある二つの側面(例えば良い面と悪い面など)が一つになることを表すとも言われています。

この仏教の習慣が、武士の礼法や、食後に感謝の気持ちを伝える「ごちそうさま」の際の合掌など、様々な場面に取り入れられていったと考えられています。特に、命をいただく食事の前には、仏教で大切にされる「いのち」への考え方と結びつき、感謝と供養の意味を込めて合掌する習慣が広まったという説があります。

子供に合掌を教える実践的なヒント

子どもたちに合掌の意味を理解し、実践してもらうためには、以下の点を意識すると良いでしょう。

まとめ:形だけでなく心も育む合掌

食事のあいさつにおける合掌は、単なる習慣や形ではなく、私たちが生かされていることへの感謝や、食べ物に関わる全ての存在への敬意を表す大切な動作です。

この合掌の意味を子どもたちに伝えることは、食の大切さを学び、命を尊び、周りの人々や自然に感謝する豊かな心を育むことにつながります。ぜひ、日々の食事の時間を通して、子どもたちと一緒に合掌に込められた温かい気持ちを感じ、深めていってください。