「いただきます」の時、体は何をする？子どもと学ぶ「あいさつ」の動作の意味
食事のあいさつは「言葉」と「体」で伝える
私たちは食事の前に「いただきます」、食後に「ごちそうさま」とあいさつをします。このあいさつは、食べ物やそれを用意してくれた人への感謝の気持ちを表す大切な日本の文化です。
このあいさつは、ただ言葉を言うだけでなく、実は「体の使い方」もとても大切なのです。子どもたちに食事のあいさつの深い意味を伝えるとき、言葉と一緒に体の動きにも目を向けてみるのはいかがでしょうか。
「いただきます」の時の体の使い方とその意味
「いただきます」と言う時に、私たちは自然といくつかの体の動きをしています。
- 合掌（がっしょう）: 多くの人が、食事の前に両手を合わせます。これは仏教の習慣に由来するとも言われていますが、食べ物そのもの、または食べ物になるために命をくれた動植物、そして食事を作ってくれた人や届けてくれた人など、関わる全ての存在への感謝や敬意を表すと言われています。手を合わせるという静かな動きは、食事をいただく前に心を落ち着け、目の前の食べ物に向き合う時間を与えてくれます。子どもには「食べ物さん、ありがとう」や「命をくれた動物さんやお魚さん、ありがとう」という気持ちを込めて手を合わせてみようね、と伝えると良いでしょう。
- 姿勢を正す: 背筋を伸ばして座ることも、食事への敬意につながります。だらしない姿勢ではなく、ピンと背筋を伸ばすことで、食事をきちんと受け止める心構えができます。これは、目の前の食べ物や、一緒に食事をする人への配慮でもあります。子どもには「かっこいい姿勢で座ると、ご飯もおいしく感じるね」などと声をかけてみましょう。
- 食べ物や食卓に視線を向ける: スマートフォンを見ながらや、他のことに気を取られながらではなく、目の前の食事や食卓を囲む人に視線を向け、「いただきます」と言うことは、その場に集中し、食事の時間を大切にしようという気持ちを表します。
これらの体の動きは、言葉に出して言う「いただきます」という感謝の気持ちを、より深く、自分自身の心や体にも刻み込む手助けをしてくれるのです。
「ごちそうさま」の時の体の使い方とその意味
「ごちそうさま」の時も、言葉と一緒に体の動きを伴うことがあります。
- 合掌: 「いただきます」と同じように、「ごちそうさま」の時も合掌をすることがあります。これは、食事が無事に終わったことへの感謝や、美味しくいただけたことへの感謝を表します。
- 食器を揃える: 食事が終わった後に食器をきちんと揃えることも、「ごちそうさま」という感謝を行動で示す大切な体の使い方です。これは、食事を用意してくれた人や片付ける人への配慮であり、「美味しくいただきました」という無言のメッセージでもあります。
- 残さず食べる（可能な範囲で）: 作ってくれた人や、食べ物になるために命をくれた存在への感謝として、いただいた食事を大切に、できるだけ残さずに食べることも、「ごちそうさま」の心につながる体の使い方と言えます。
子どもへの教え方・授業での活用アイデア
小学校で子どもたちに食事のあいさつの「体の使い方」を教える際の具体的なアイデアをいくつかご紹介します。
- 一緒にやってみる: 教師が手本を見せながら、「先生と一緒に、背筋をピンとして、手を合わせてみよう」などと声をかけ、子どもたちと一緒に実践します。
- 絵や写真を使う: 「きれいな姿勢」や「手を合わせたポーズ」の絵や写真をカードにして、「これはどんな気持ちを表しているかな？」などと問いかけながら、体の動きの意味を考えさせます。
- 簡単な言葉で説明する: 「手を合わせるのは、ありがとうの気持ちだよ」「背中を伸ばすと、ご飯をしっかり食べるぞ！っていう気持ちになるよ」など、子どもに分かりやすい言葉で説明します。
- 役割を取り入れる: 給食当番の子に、食事の前にみんなで姿勢を正す声かけを任せるなど、役割を通じて体の使い方を意識させます。
- 「ありがとう」の気持ちとつなげる: 体の動きは、心の中にある「ありがとう」の気持ちを表すための方法の一つであることを繰り返し伝えます。「心で思うだけでなく、体でもありがとうを伝えようね」というメッセージは、子どもにも響きやすいでしょう。
まとめ
食事のあいさつは、単に「いただきます」「ごちそうさま」と声に出すだけでなく、合掌したり姿勢を正したりといった体の使い方とセットで行うことで、より豊かな意味を持ちます。
これらの体の動きに込められた感謝や敬意の気持ちを子どもたちに伝えることは、食育の観点からも非常に有効です。子どもたちは、体の動きを通して、食べ物への感謝や、食事の時間を大切にする心を、体感しながら学ぶことができるでしょう。
ぜひ、日々の給食の時間や、食育の授業の中で、食事のあいさつの「体の使い方」にも注目し、子どもたちと一緒にその意味を考え、実践してみてください。