「いただきます」は誰への「ありがとう」?食卓から広がる感謝の輪
食事の前に手を合わせて「いただきます」と言う。日本の多くの家庭や学校で、子供たちが教わる大切なあいさつです。この「いただきます」という言葉には、一体どのような意味が込められているのでしょうか。
命への感謝、食べ物を作ってくれた人への感謝など、様々な側面が言われますが、ここではもう少し視野を広げ、「いただきます」に込められた感謝の輪について考えてみたいと思います。そして、その考え方を子供たちにどのように伝えていくか、具体的なヒントもご紹介します。
「いただきます」の意味を改めて考える
一般的に「いただきます」は、「私の命のために、動植物の命をいただきます」という、食べ物そのものや、そこに宿る命への感謝を表す言葉だとされています。また、「食べ物を作ってくれた人、調理してくれた人に感謝します」という意味も込められていると教えられることも多いでしょう。
どちらも大切な意味であり、まずはこれらをしっかりと子供たちに伝えることが重要です。食べ物が目の前に届くまでに、様々な命や、誰かの手間がかかっていることを知る第一歩となります。
感謝の対象をさらに広げてみましょう
次に、その感謝の対象をもう少し広げて考えてみましょう。私たちの食卓に並ぶ食べ物は、多くの人の手によって運ばれ、加工され、お店に並び、そして私たちの手元に届きます。
例えば、お米一粒を例に考えてみましょう。 1. 田んぼで育てる人: 農家さんが、種をまき、水をやり、草を取り、大切に育てます。 2. 収穫・乾燥・選別する人: 育った稲を刈り取り、乾燥させ、品質の良いお米を選びます。 3. お米を運ぶ人: トラックなどで倉庫や工場、お店へと運びます。 4. お米を売る人: お米屋さんやスーパーマーケットなどで、私たちが買えるように並べます。 5. お米を炊く人: 家庭であればお家の人、学校であれば給食の先生が、美味しく食べられるように炊いてくれます。
このように、私たちがご飯を食べるまでには、たくさんの人が関わっているのです。魚や野菜、肉、牛乳など、どんな食べ物も同じように、多くの人の努力や工夫があって私たちの食卓に届きます。
「いただきます」は、食べ物の命だけでなく、こうした食べ物が私たちの手元に届くまでに関わってくれた、すべての人々への「ありがとう」という意味も含まれていると考えることができるのです。
子供たちに伝えるためのヒント
この「感謝の輪」の考え方を子供たちに伝えるために、授業やご家庭で試せる具体的な方法をいくつかご紹介します。
- 食べ物が届くまでマップ作り:
- 子供たちに身近な食べ物(例:お米、牛乳、卵、野菜など)を選んでもらいます。
- その食べ物が「どこから来て」「誰が関わって」「どうやって食卓に届くか」を一緒に考えて、絵や言葉で表したマップを作ります。
- 農家さん、漁師さん、運送屋さん、お店屋さん、調理する人など、様々な仕事があることを伝えます。
- 「もし〇〇さんがいなかったら?」ゲーム:
- 「もし、お米を作る農家さんがいなかったら、私たちはご飯を食べられるかな?」
- 「もし、スーパーに運んでくれるトラックの運転手さんがいなかったら、どうなるかな?」
- といった問いかけを通して、それぞれの役割の大切さを考えさせます。
- 給食のメニューから考える:
- 今日の給食のメニューを見て、「このお米はどこから来たのかな?」「この魚は誰が捕ってくれたのかな?」などと想像を膨らませてみます。
- 献立表を見ながら、それぞれの食材に関わった人々に思いを馳せる時間を持つことも有効です。
- 「いただきます」の言い方を変えてみる:
- 「命をいただきます」という意味を込める時と、「作ってくれた人、運んでくれた人、調理してくれた人にありがとう」という気持ちを込める時がある、と伝えてみましょう。
- 実際に「農家さん、ありがとう」「お母さん、ありがとう」など、具体的な誰かに向かって心の中で「ありがとう」を伝えてみることを促します。
これらの活動を通じて、子供たちは「いただきます」というあいさつが、単なる食事開始の合図ではなく、目の前の食べ物と、それに繋がる多くの命や人々の営みへの深い感謝の気持ちなのだと理解を深めることができるでしょう。
まとめ
「いただきます」には、食べ物の命への感謝、そして食べ物が食卓に届くまでに関わる全ての人々への感謝が込められています。この感謝の輪を子供たちに伝えることは、食べ物を大切にする心や、自分たちが多くの人に支えられて生きているという実感、そして社会との繋がりを感じる心を育むことにつながります。
日々の食事のあいさつを通して、子供たちの心に豊かな感謝の気持ちが育まれるよう、ぜひ今回の内容を授業やご家庭での関わりに活かしていただければ幸いです。