食事のあいさつ学

小学校で教える「いただきます」:命への感謝とフードロス、SDGsを繋げるヒント

Tags: 食事のあいさつ, いただきます, SDGs, フードロス, 食育

小学校の先生方に向けて、「いただきます」という食事のあいさつを、単なる食事のマナーとしてだけでなく、より深い学びへとつなげるヒントをお届けします。今回は、「いただきます」に込められた「命への感謝」と、現代社会の重要なテーマである「フードロス」、そして「SDGs(持続可能な開発目標)」をどのように子供たちに分かりやすく伝えられるか、その視点と具体的な授業への活用アイデアをご紹介します。

「いただきます」が伝える「命」のつながり

私たちが日々の食事で口にするものは、元をたどればすべて命あるものです。お米は稲の命、野菜は植物の命、お肉やお魚は動物や海の命です。また、それらの食べ物が私たちの食卓に届くまでには、たくさんの人々の手がかかっています。農家さん、漁師さん、運んでくれる人、料理してくれる人など、多くの働きがあります。

「いただきます」という言葉には、「これらの命をいただくことへの感謝」「作ってくれた方々への感謝」という意味が込められています。子供たちにこの意味を伝えることで、食べ物への敬意や、自分を取り巻くたくさんのつながりへの感謝の気持ちを育むことができます。

子供たちへの説明では、難しい言葉を使わず、具体的な例を挙げることが有効です。

このように、食べ物が「どこから来たのか」「誰が関わっているのか」をたどることで、「いただきます」がたくさんの命と人への「ありがとう」なのだと伝えることができます。

命への感謝が「フードロス」を考える第一歩に

「いただきます」を通して命への感謝を学ぶことは、食べ物を大切にする心につながります。そして、食べ物を大切にすることは、「フードロス」、つまり「まだ食べられるのに捨てられてしまう食べ物」を減らすことにつながります。

日本だけでなく、世界のあちこちで、たくさんの食べ物が捨てられています。これは、せっかくいただいた命を無駄にしてしまうことであり、食べ物を作るために使われた水やエネルギーも無駄になってしまうということです。

子供たちにフードロスについて伝える際は、罪悪感を植え付けるのではなく、「どうすれば食べ物を無駄にしないようにできるかな?」と一緒に考える機会にすることが大切です。

給食の時間に、クラス全体で残量をグラフにしてみたり、「食べ残しを減らすチャレンジ」を企画したりするのも、子供たちが主体的にフードロスについて考える良い機会になります。

「いただきます」と「SDGs」のつながり

近年、学校教育でも注目されているSDGsは、地球の未来のために世界中のみんなで取り組む17の目標です。実は、「いただきます」に込められた「命への感謝」や「食べ物を大切にする」という心は、SDGsの目標とも深くつながっています。

特に関連が深いのは、以下の目標です。

「いただきます」という日々のあいさつは、SDGsのような大きな目標への第一歩となりうることを伝えてみましょう。

授業への活用アイデア

これらの内容を授業で伝えるための具体的なアイデアをいくつかご紹介します。

  1. 「食べ物の旅」をたどる: 給食のメニューから一つ選び、それがどこから来て、誰がどのように育てたり作ったりしたのかを調べる活動。絵や図でまとめるのも良いでしょう。
  2. 「いただきます」紙芝居/劇: 「いただきます」の意味や、食べ物の大切さを伝えるオリジナルの紙芝居や短い劇を子供たちと一緒に作り、発表する。
  3. フードロス啓発ポスター作り: 給食の残量を減らすための標語やイラストを考え、ポスターにして掲示する。
  4. 「感謝を込めて食べようチャレンジ」: 一週間など期間を決めて、意識して「いただきます」を言う、感謝して食べる、食べ残しをしないことに取り組む。
  5. SDGsとの関連ワークショップ: 食事のあいさつやフードロスとSDGsの目標(特に目標2と12)を関連付けた簡単なクイズやカードゲームなどを行う。

まとめ

「いただきます」は、私たちの命を支えてくれる食べ物への感謝、そして食べ物が食卓に届くまでの多くの人々の働きへの感謝を表す、日本の素晴らしい文化です。このあいさつを通して、子供たちは食べ物を大切にする心を育み、それはやがてフードロス削減やSDGs達成といった地球規模の課題への意識へとつながっていきます。

日々の給食の時間や食育の授業で、「いただきます」に込められた深い意味を子供たちに伝え、感謝の心と未来を考える力を育んでいきましょう。