子どもと「いただきます・ごちそうさま」を続ける:習慣化のメリットと実践法
「いただきます」や「ごちそうさま」といった食事のあいさつは、日本の食文化において非常に大切な要素です。これらのあいさつを子どもたちが自然とできるようになるためには、「習慣」として身につけることが重要になります。
なぜ、食事のあいさつを習慣にすることが子どもの成長にとって良いのでしょうか。そして、どのようにすれば子どもが楽しく、無理なくあいさつを続けられるようになるのでしょうか。今回は、食事のあいさつの習慣化のメリットと、日々の実践に活かせる具体的な方法についてご紹介します。
食事のあいさつが習慣になることのメリット
食事のあいさつを単なるマナーとしてではなく、日々の習慣として行うことには、子どもたちの心と体の成長にとって多くの良い点があります。
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心の安定と安心感 毎日決まった時間に決まったあいさつをすることで、子どもは食事の時間が始まる、終わるという区切りを意識できます。これは、生活リズムの安定につながり、子どもに安心感を与えます。予測可能な流れは、特に幼い子どもにとって心の安定剤となります。
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感謝の気持ちの定着 「いただきます」には命への感謝や作ってくれた人への感謝、「ごちそうさま」には食事への感謝や片付けてくれる人への感謝が込められています。あいさつを繰り返すことで、その言葉に込められた意味を少しずつ理解し、感謝の気持ちが自然と心に根付いていきます。
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コミュニケーションの円滑化 食事のあいさつは、食卓を囲む人々とのコミュニケーションの始まりであり終わりです。家族や友達と一緒に声を出すことで、一体感が生まれ、楽しい雰囲気を作ります。これは、集団の中での自分の役割や、他者との関わり方を学ぶ第一歩となります。
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自己肯定感の向上 あいさつができた、という小さな成功体験を積み重ねることで、子どもは「自分はできる」という自信を持つことができます。周りの大人に褒められることも、子どもの自己肯定感を高める助けとなります。
子どもに食事のあいさつを習慣にしてもらうための実践法
では、子どもたちが食事のあいさつを楽しく習慣にできるようにするには、どのような工夫ができるでしょうか。小学校の先生方が日々の指導や保護者へのアドバイスに活用できる具体的な方法をいくつかご紹介します。
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大人がお手本を見せる 子どもは周りの大人の行動をよく見て真似します。先生自身や保護者が、毎回の食事できちんと、そして楽しそうにあいさつをすることが最も基本的な、そして効果的な方法です。「いただきます」と言う時に、子どもに聞こえるように少し大きめの声で言ってみるのも良いでしょう。
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「楽しい」をプラスする あいさつを義務感ではなく、楽しい習慣にするための工夫を取り入れましょう。
- 歌や手遊び: 簡単なメロディーに合わせてあいさつをする歌を取り入れたり、あいさつの時に手を合わせる動作を分かりやすく教えたりします。「いただきます」の合掌の由来(命への感謝など)を簡単な言葉で伝えるのも良いでしょう。
- 食卓での会話: なぜあいさつをするのかを、難しい言葉を使わずに、子どもが興味を持つようなエピソードを交えて話します。例えば、「このお米は、農家さんが一生懸命作ってくれたんだよ。だから『ありがとう』の気持ちを込めて『いただきます』って言うんだよ」というように具体的に伝えます。
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完璧を求めすぎない 毎日毎回、完璧なあいさつができなくても大丈夫です。声が小さかったり、忘れてしまったりすることもあるかもしれません。大切なのは、「続けようとしている」という気持ちや行動を認め、褒めることです。できなかった時も、頭ごなしに叱るのではなく、「次は言ってみようね」と優しく促しましょう。
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小さな変化に気づき、褒める 子どもが少しでもあいさつを意識したり、以前より声が出せるようになったりしたら、具体的に褒めましょう。「今の『いただきます』、とっても元気な声だったね!」「今日は忘れずに言えたね、すごいね!」など、具体的な行動を褒めることで、子どもは達成感を感じ、次も頑張ろうという気持ちになります。
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視覚的なサポートを取り入れる 低学年の子どもには、視覚的な情報が理解の助けになります。
- イラストやポスター: 「いただきます」と「ごちそうさま」の時の絵や言葉を教室や家庭の食卓の近くに貼っておくのも良いでしょう。あいさつの時の体の動き(合掌など)を表すイラストも有効です。
- チェックリスト: 一週間、あいさつができたらシールを貼るなど、ゲーム感覚で取り組めるチェックリストを作るのも、習慣化を促す一助となります。(これは教材作成のヒントになります)
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場所や状況と結びつける 「席に着いたら『いただきます』」「全部食べ終わったら『ごちそうさま』」のように、特定の場所や状況とあいさつを結びつけることで、自然と思い出しやすくなります。
まとめ
食事のあいさつを習慣にすることは、子どもが感謝の気持ちを育み、生活にリズムを作り、他者との関わり方を学ぶ上で、とても価値のあることです。日々の繰り返しの中で、子どもたちは言葉に込められた意味を少しずつ吸収していきます。
先生方がクラスで、または保護者との連携を通じて、食事のあいさつを楽しく、無理なく続けるための工夫を取り入れることは、子どもたちの健やかな成長をサポートすることにつながります。今日からできる小さな一歩を、子どもたちと一緒に踏み出してみてはいかがでしょうか。