感謝を行動に:食事のあいさつから学ぶ「食べ物を大切にする心」と具体的な実践
はじめに
日々の食卓で交わされる「いただきます」と「ごちそうさま」。これらのあいさつは、日本の食文化において非常に大切な意味を持っています。私たちはこれまで、これらの言葉に込められた「命への感謝」や「作ってくれた人への感謝」といった意味を解説してまいりました。
これらのあいさつは、単に言葉として発するだけでなく、その心を行動で示すことが重要です。特に成長期にある子どもたちには、あいさつを通じて「食べ物を大切にする心」を育むことが、豊かな人間性を育む上で欠かせません。
この記事では、「いただきます」「ごちそうさま」という言葉に込められた感謝の気持ちを、どのように具体的な「食べ物を大切にする行動」につなげて教えることができるかについて、小学校の先生方が授業やご家庭への啓発活動で活用できる視点からご紹介します。
「食べ物を大切にする心」とは
「食べ物を大切にする心」とは、食料がどのようにして私たちの食卓に届くのかを知り、食べられることへの感謝を持ち、無駄なくいただくことを通じて育まれる心です。
子どもたちに伝える際には、以下のような点を分かりやすく説明することが有効です。
- 命の恵み: 私たちが食べているものは、かつて生きていた植物や動物の「命」そのものです。お米一粒、野菜一つ、魚やお肉も全て命からできています。
- 自然の恵み: 食べ物は、太陽の光、水、土といった自然の恵みがなくては育ちません。雨が降ったり、お日様が出たり、自然の力を借りて育つのです。
- たくさんの人の労力: 農家の方が種を蒔き、育て、収穫し、運ぶ人、お店に並べる人、そして給食室やご家庭で調理してくれる人。たくさんの人の手と時間がかかっています。
「いただきます」という言葉は、これらの命、自然、人々の恵みや労力に対する感謝の気持ちを表しています。そして、「ごちそうさま」は、食事を終えて、それらを全て受け取ったことへの感謝と、片付けなど次の行動への始まりを意味します。
あいさつと行動を結びつける具体的な実践
「いただきます」「ごちそうさま」の感謝の心を、具体的な行動として示すことの重要性を子どもたちに教えましょう。あいさつは心の準備であり、行動は心の表れです。
食事の前:「いただきます」の心を行動に
- 「食べきれるかな?」と考える習慣: 食事の前に、自分の目の前にある量を見て、「これは全部食べきれるかな?」と考える時間を持ちます。もし多いと感じたら、どうすれば良いか相談させることも大切です。これは、無駄なくいただくための第一歩です。
- 正しい姿勢で座る: 食事の準備をしてくれた人や、一緒に食べる人への敬意を示す行動の一つです。
- 手を合わせる意味を再確認: 「いただきます」と共に手を合わせる合掌は、感謝の気持ちを表す形です。その意味を改めて伝えましょう。
食事中:感謝を込めていただく行動
- よく噛んで食べる: 食べ物を大切に、そして自分の体に取り込むという意識を持つことにつながります。
- 好き嫌いなく、まずは一口挑戦: 苦手な食べ物にも、育ててくれた人や作ってくれた人のことを思って、一口だけ挑戦してみる勇気を伝えましょう。これも立派な「ありがとう」の行動です。
- 食器を丁寧に扱う: 食べ物を盛る器も、それを作った人の労力が込められています。丁寧に扱うことで、食に関わる全てのものへの感謝を示します。
- 遊び食べをしない: 食べ物で遊んだり、だらだらと時間をかけたりせず、食べることに集中することも、食べ物への感謝の表れです。
食事の後:「ごちそうさま」の心を行動に
- 「食べきった!」ことを確認する: お皿に残さずきれいに食べることは、「いただきます」の心、つまり命や恵み、労力を無駄にしないという強い意思表示です。きれいに食べられたら、ぜひ褒めてあげましょう。
- 使った食器を自分で運ぶ・片付ける: 食事を準備してくれた人への感謝を行動で示します。給食であれば、自分たちが使う場所をきれいにする意識にもつながります。
- テーブルを拭く、周りをきれいにする: 次に使う人のことを考える行動であり、食べ物のカスや汚れをそのままにしないことも、食べ物や場所への感謝です。
授業での活用アイデア
これらの具体的な実践を教えるために、小学校では様々な活動が考えられます。
- 食べ物の旅: 畑から食卓までの道のりを絵や写真、短い動画などで紹介し、どれだけ多くの手間がかかっているかを知る活動。
- 給食調べ隊: 給食に使われている食材がどこから来て、誰が作っているのかを調べ、発表する活動。
- 残食ゼロ大作戦: クラス全体の給食の食べ残しの量を測り、どうすれば食べきれるかを話し合い、目標を設定して取り組む活動。
- 「ありがとう」を込めた食べ方発表会: 子供たちに「自分が実践している食べ物を大切にする行動」を発表してもらう機会を設ける。
- 給食当番体験: 献立を配膳する大変さや、きれいに盛り付ける工夫などを体験する。
まとめ
「いただきます」や「ごちそうさま」は、単なる習慣的なあいさつではなく、食に関わる全ての命、恵み、そして人々の労力に対する深い感謝の言葉です。そして、その感謝の心は、言葉だけでなく、食べ物を無駄にしない、丁寧にいただく、後片付けまできちんと行うといった具体的な行動によって示されるべきものです。
小学校の先生方には、これらのあいさつの言葉と「食べ物を大切にする具体的な行動」を一体として子どもたちに伝えていただきたいと考えております。子どもたちが日々の食事を通して、感謝の心を育み、健やかに成長していくために、この「あいさつ学」がお役に立てれば幸いです。